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『啓蒙の世紀と文明観』
弓削尚子 著 
2004年刊 山川出版社



「新大陸」の発見により、人間は神の知識を超えた。
用済みになった神は世界の片隅に追いやられ、人類は勝手に大いに繁栄した。
人類は新たに得た知識で夢中になって人類自身を分類し、分析し、
バラバラに分解した。
そしてさらに新しい知識を得て、
人類自身を完全に消滅させることを思いついた。
それが20世紀のことである。
世界のはるか片隅に追いやられた神は、
人類の成功を大いに祝福し、そして密かに呪い続けている。


 



以下、本文より・・・

・啓蒙主義は一国の歴史(ナショナルヒストリー)のなかでみることができず、
ヨーロッパという「全体的関連をもった世界」の思潮として考えなければならない
・知の大転換は二つの段階をへて進められた。
第一に、知識を所有する人間が世俗化していく段階。
つまり、「神の恩寵に照らされた人間だけが知識を担い得る、
という原理から、
すべての人間が等しく知識を担い得る、
という原理への転換」が起こる。
・第二の段階では、人間の知識における神の存在が効力を失う。
・聖書の記述と「新大陸」の存在をどう整合させるか
・「啓蒙の世紀」は、ヨーロッパの外の世界との接触により、
知のあり方を、窮屈なキリスト教の枠組みから解き放つ時代であった。
・ギルド的な構造をもつ伝統的な大学や教会、修道院にかわって、
王立アカデミーや科学協会が新しく知の中枢組織となっていく。
・コーヒーや紅茶は脳の働きを活発にさせることもあって、
知識人たちの生活に浸透した。
・デフォーの作品以降、多くの「ロビンソンもの」が登場し、
植民地を膨張させるヨーロッパ諸国で愛読された。
自ら「発見した」土地を領有し、
先住民に対する教化と馴致をおこなうロビンソンは、
ヨーロッパ植民者の原型となった
・1770年代ころから世界各地の民族を分類する研究が
大きな進展をみせ、「人種」の概念を生み出すとともに
ヨーロッパの外の諸民族をネガティヴにとらえる
「科学的」な言説が練り上げられていった。
・聖書にかわって、皮膚の色や毛髪、体格など、
身体的特徴から世界の人間を「科学的に」把握し、
分類しようとする知の枠組みがつくられていく。
・キリスト教徒か異教徒かという宗教上の二分化でなく、
肌・体格・顔・鼻・目・ひげ・髪などの色かたちを基準とし分類
・ブルーメンバッハは、「人類の真の色」である白い肌をもった
「コーカサス」を中心に、もっともかけ離れた二極点に
「モンゴル」と「エチオピア」を位置づけ、
それぞれの中間段階に「アメリカ」と「マレー」をすえた。
・「啓蒙の世紀」に「科学的な」人種概念が登場した
・こうした身体的特徴の観察は、
男女の性格のステレオタイプ化を進め、
男は「自立的」「活動的」「理性的」「勇敢」であり、
女は「依存的」「受動的」「感情的」であることが
自然にかなっていると説かれるようになる。
・身分制秩序がフランス革命によって解体されると、
「男」とか「女」といったカテゴリーが今まで以上に前面にあらわれ、
新しい時代のジェンダー秩序が打ち出されていった。
・キリスト教的歴史観にかわって「人類」の歴史全体をとらえなおしたとき、
世界史にはどのような原理が潜在しているのだろうか。
その答えを、啓蒙知識人たちは、
歴史そのもの内在する進歩、発達、文明化という理念に求めた
・もともと人類史の叙述は、
経済形態の変遷を分析したアダム・スミスの研究に多くを負い
・科学と歴史がいっしょになって、
全自然はある高い目標に向かって、
ゆっくりではあるが着実に進んでいるという考え方を提起した
←当時の科学について バターフィールド
・ヨーロッパ人以外にこれほどすばらしい弧を描いた頭のかたち、
これほど大きな頭脳をどこに見出すことができるだろうか。
←マンチェスターの医師 ホワイト
・啓蒙の文明観には、ジェンダー秩序の柱を一つとした
西洋近代社会の「進歩」がしっかり刻み込まれている
・大航海時代におけるヨーロッパと「新世界」との出会いから、
ジェンダー的な関係は始まっていた。
→「アメリカ」=アメリゴ・ヴェスプッチの女性形から派生
・啓蒙知識人男性が、
下位にある啓蒙されるべき女性=未開人を「保護」し支配する。
「啓蒙の世紀」においては、
この支配は、むき出しの暴力によっておこなわれるのではなく、
女性=未開人に関する「科学的」知識を集大成して、
啓蒙化・文明化という大義名分のもとでおこなわれた
・未知という闇のヴェールを剥がし、
大陸=身体の内部にまで踏み込んでくまなく探求し、
未知を既知とすることによって
その対象を把握・征服するという一連の行為は、
なんと性的な意味合いを含んでいることだろう。





 
 

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