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『贈与論』

マルセル・モース 著 
吉田禎吾/江川純一 訳 2009年刊 ちくま学芸文庫
有地亨 訳 2008年刊 勁草書房
有地亨/伊藤昌司/山口俊夫 訳 1973年刊 弘文堂(『社会学と人類学1』収録)


『贈与論』(Essai sur le don)は
フランスの社会学者、人類学者である
マルセル・モース(Marcel Mauss)によって、
1924年に発表された人類学の古典である。


「友には友らしくしなければならず
贈り物には贈り物を返さなければならない。
笑いには笑いで
嘘には欺き応じなければならない。」
スカンディナビア神話『エッダ』より

 

 

贈り物の歴史は神話と共に古い。
<贈るー受け取るー返す>という一連の義務。

「贈られたものに潜むどんな力が、受け取った人にその返礼をさせるのか」

その力は物に宿る呪力(マナ)として、
土地から生まれその土地に還る生命の原理として、
神話の掟や神との約束として、クラやポトラッチのような文化として、
富める者の名誉として、人々の倫理や道徳や法として、
人々とともに常にそこにあり続けているものである。
 

それは様々な側面を見せる「全体的社会的事象」であり、
人から人へ連鎖し循環している。
 

「返す」は「贈る」から力を与えられ、
その「贈る」に潜む力も、その前の「返す」によって与えられていた力である。
人はその社会の一員として、その循環を繋いでいる。
 

贈与とはモノやカネのことではなく、あちらからこちらへ、
こちらからそちらへ、あるいは今からその先へ、
またはその先からずっと昔へ、循環する力、運動そのもののことであり、
その運動が回転する独楽のように社会を安定させてきたのである
(とまでは明確には書かれてはいないが…)
 

では、なぜその運動をするのか。
それは<われわれの本性は、運動のうちにある>(パスカル『パンセ』)
からなのだろう
 

モースはまた「諸社会は(中略)どれだけ互いに関係を安定させ、与え、受け取り、
お返しすることができたかに応じて発展した」として、バラバラの個人が利得だけを求めて争い、
人間が「経済動物」になってしまう社会には我慢がならなかったようである。
 

「交際するためには、まず槍から手を離さなければならない」
それが人類の知恵である。

 

 




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