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『交易する人間(ホモ・コムニカンス)』
今村仁司 著
2000年刊 講談社選書メチエ



人が生まれて、今ここにあるということは、既に命を受け取っているということである。

そしてその受け取り手として、人は生まれた時から「いのち」の負い目を負っている。

生命の贈与を受けた者として、人には命を次に受け渡す義務がある。

それは子孫への譲渡か、神への返済か、あるいは負い目を共有する者たちとの交易か。

「いのち」は別の「いのち」へと変わっていく。
変わりながらも変わりなく「いのち」は永遠の相の下にある。
そのような血と祈りで繋がれた贈与の世界が、
生産と交換に特化した市場世界へと大きく塗り替えられていくのが近世や近代と呼ばれる時代である。
牛や豚が単なる肉として市場に並ぶようになると、
その隣に人も並べられるようになり、すべての「いのち」は貨幣で計られるようになった。
 

あらゆる「いのち」が貨幣の下で平等になり、大量生産され大量消費されるようになった。
 

人は自らが作り上げたシステムによって疎外されているのだが、
そのシステムがあまりに見事に圧倒的な豊かさを夢見させてくれるので、
もう自力ではそこから抜け出せなくなっている。
そのような現在の状況に個人的に不満を述べる人は多い。
病気になったり、自殺したりする人も多い。
それでも、それ以上に増え続ける人口の方が圧倒的に多い。
 

豊かさの壁は高い。


 
 

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