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『社会人類学』
中根千枝 著
2002年刊 講談社学術文庫


「タテ社会の人間関係」拡大アジア版、というか本筋はこちらで
「タテ社会」はこの中にあらわれるモデルのひとつと解釈すべきなのだろう。
そしてこれがあるから「タテ社会」論が、単なる印象論ではなく、
学問的に検討されるべき価値のあるものだとはっきりわかるのである。

 



以下、本文より…

・異なる民族と長期間一つの社会を構成し、
その結果、言語、風俗習慣が他民族のものに変化してしまっても、
社会組織はなかなか変化しないのが常で、 社会組織に比して、言語、風俗習慣といった「文化」は変化しやすく、
文化を単位とすることも必ずしも有効な手段ではない

・統治機構をもたない社会はあっても、政治システムをもたない社会はない

・社会組織の外郭と政治単位の外郭とは一致しないのが普通である

・その社会の一部に文字を使用できる中枢がある

・世界のどこにもそのような母権制(女性が政治的権力を独占している)の
社会は見出されないのである。
母系制はよく母権制と同意義に使われたりするが、
実証的な科学的研究に基礎を人類学においては、
母系制は論じられても母権制は対象になりえないのである

・すべての母系制社会が、どちらかというと
南方に位置する農耕社会のなかにみられることで、
北方の遊牧民族諸社会(アラブも含めて)が
すべて父系性であることと対照的である

・リネージとはその構成員がお互いの血縁関係を
たどることのできる範囲に使われ、
クランは、必ずしも相互の関係が設定できなくとも、
同一祖先から派生したという認識をもっている人々の範疇をさす

・戦国・江戸時代を経て、いわゆる嫁入りが圧倒的に多くなって、
それが主流となったために、
男子のうち一人が生家に残るのが普通と思われてきたが、
それ以前は婿入りのケースが相当あったものと思われる

・家長という地位の継承と、それに付随する財産の相続という二つの概念

・「田分け」という言葉にもあらわれているように、
田を分割することは、おろかしいと処置されてきた

・社会の発達にとって、幹線ルートの中継地に位置する、
すなわち、コミュニケーション・ネットワークに恵まれていることが、
いかに重要な要素か

・インドではコックはブラーミンの職業の一つになっている

・禄に依存し、階層全体にわたって、
その成員が自らの土地をもたなかったという経済的脆弱性が
何よりそのライフ・スタイル(たんに目に見えるものだけではなく)
を維持することができなかった大きな原因←武士

・余暇を表す長袍(チャンパオ)
〔足首までとどく長い服、読書人のシンボル〕は名誉と威信の象徴であり、
紳士がもっとも手放したがらぬもの←中国

・時代は近世から近代・現代と大きな変貌をとげているが、
この東アジアの社会においては、
相変わらず、官僚はエリートであり、
彼らによって支えられている官僚制は、
それぞれの国において、
最も重要な位置づけをもっている。
この官僚制を基軸とした文化・社会こそ、
私は東アジアの特色であると思う

・筆者がタテのシステムとよぶ構造をもつ集団においては、
下部の最小単位が最も機能が高い。
それは、その集団の成員が毎日顔を合わせる、
いわゆるフェイス・トゥ・フェイスの小集団で、
農村であれば「家」、近代組織であれば一つの職場ということになり、
その集団の封鎖性が高いことが指摘できる

・日本的な集団構造、構成のあり方は
モノシリックな構造をもった単純明快なもの

・「近世社会に於いて譜代制度、世襲制度が固定すると共に、
地位・身分・格式・業務を世襲して抜けざることを株と称し、
その数が限定さるるに及び、一の権利となり、
更に之が売買・譲渡の客体となるに至って、
株又は株式の概念が固定するに至った」←宮本又次『株仲間の研究』

・株仲間というギルドの構成員たる資格は、
同一資格を有する個人ではなく、「株を有する者」である
すなわち、株仲間の組織単位は株にあって個人ではない

・東南アジア社会では、そうした集団所属がないか、
あっても十分な意味をもたず、
個々人の結びつきの方がより重要と考えられているために、
あくまで個人をたどることになる

・マニラやジャカルタのような大都市においても
家族を中心とした紐帯の機能は驚くほど高い。
他の関係が農村におけるよりも錯綜するというより
拡散する傾向にあるわけであるから、
論理的にも家族の紐帯は農村におけるよりも
一層強く機能するはずである

・東南アジアでは、こうしたコネクションが、
あらゆるものに優先して、
社会のあらゆる分野にみられるという点に特色がある。
つまり、社会全体がこうした個人と個人をつなぐネットワークを
母体として機能しているということができる


 
 

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